※過去記事「自己分析の方法について〜カウンセリング療法は自己分析ありき〜」を全面修正しました。
カウンセリングってどんなイメージでしょうか。
「話を聞いてくれる」「共感してくれる」「誰にも言えなかった話ができるので、心が晴れる」
そんなイメージかもしれませんね。
長期的にカウンセリングを受けている場合、カウンセラーに話を聞いてもらうことで、自分の悩みやメンタルの症状が改善していくことを期待するでしょう。
実際、カウンセリングで症状が良くなる人はたくさんいます。
しかし、なかには
「カウンセリングで話すときは、すっきりするけれど、自分の日常は何も変わらない」
「メンタルの症状があまり改善しない」
と悩む人もいるのではないでしょうか。
うつなどのメンタル症状は、再発率も高く、5割以上(*)ともいわれています。
カウンセリングを治療として生かすためには、患者の自己分析、自己洞察が不可欠です。
カウンセラーはプロとはいえ、その人が抱えている問題を全て把握できるわけではありません。患者が言葉で表現できない限り、その人の奥底にある問題を知ることは難しいでしょう。
だからこそ、自分で自分の考え方や感じ方の癖を、見つけていく必要があります。
長期的にカウンセリングを受けても、症状が改善しない場合は、自己分析が足りていないかもしれません。
私は自身のカウンセリング体験から自己分析を始めました。
自分なりに自己分析を治療に生かした経験を書こうと思います。
目次
自己分析って?
自己分析とは、自分の考え方や感じ方、自分の行動パターンに自分で気がつき、自分を知っていく行為のことです。
似た言葉で「自己洞察」がありますが、個人的には同じ意味合いかと思います。
自己分析も自己洞察も、人生にうまく対処できない原因を自分のなかに探していきます。
「自分のなかにある何かが、生活全体や人生に影響を及ぼしている」
「自分のどこに、対人関係をだめにしている原因があるだろう」
そうやって過去の経験を細かく思い起こすと、そもそも自分はどんな考え方を持っているのか、感じ方をしているのか、ひらめいたり、気づいたりします。
ここで難しいのは、自分の“感じ方”や“思考のしかた”に気がつくことです。
人は何か問題が起きると、どうしても「ああすべきだった」「あの問題の原因は、〇〇だった」というように、問題と原因を考え、責任がどこにあるかを探してしまいます。
また物事や他人にたいする分析に、終始してしまいます。
そんな問題解決をする思考ももちろん大事ですが、心を解いていくには、自己分析という別のやり方が必要です。
なぜなら、自分の思考パターン、行動パターンで、自ら苦しめる状況を引き起こしている場合があるからです。
しかし感じ方や思考パターンは、何年も自分で培ってきたものなので、もはや癖みたいに頭と体に染みついています。
自己分析がうまくいかない原因は、誰でも自分のことには気がつきにくいという難点があるからです。
カウンセリング療法で、多くの人が治っていくのは、カウンセリングをとおして、自然と自己分析ができるためでしょう。
カウンセラーは基本的に、患者のこころの中に答えがあると思っています。
だから患者への語りかけは、患者自身が答えを見つけていくよう導いていくものです。
また患者の考えや感情を整理する手助けもしてくれます。
患者もカウンセラーにたいし言葉で自身を表現しているうちに、思考も整理され、凝り固まった思考や思い込みから解かれていくことも多いでしょう。
しかしなかには、自己分析がうまくいかず、自分の癖に気がつくまで、何年もかかる場合が発生してしまいます。
自己分析の難しさ
なぜ思考の癖に気づくのは、難しいのでしょう。
それは、自分の癖が、自分で自分を守ってきた役割もあるからです。
例えば、男性に多大なる期待を抱き続ける依存度の高い女性がいた場合。
彼女は自分の期待になかなか応えてくれない男性との恋愛に苦しんでいます。しかし彼女は、期待を口にしたり、期待になぜ応えてくれないのか、男性に聞いてみることをしないまま、自分一人で苦しんでいます。
この女性はどんなに苦しくても、自分の期待を恋人からきっぱりと(もしくはやんわりと)拒否される方が怖いので、黙って苦しむ道を選んでいます。
彼女にとっては、相手の本心を尋ねるというリスクから自分を守っているのです。
他人から見たら、「思い切って相手に尋ねてみればいいのに」と思うでしょう。
もし相手に拒否されても、今の苦しみから解放されるし、立ち直って別の道を探せます。
しかし彼女は人生の可能性を放棄している実感などなく、叶うかどうか分からない夢に自分を託し続けてしまいます。
こういった女性は、自分が男性に依存しやすいこと、拒否されることをとても恐れている癖に、自分で気がつくことは難しいでしょう。
おそらく、とても時間がかかると思うし、周囲に指摘されても、なかなか受け入れないかもしれません。
自己分析が難しいのは、「自分で認めたくない気づき」が出てくる点です。
この「認めたくない気づき」にたいし、洞察は何度も中断されたり、意味を探ることを途中でやめてしまったり、自分にとって楽な意味へと逃げてしまいがちです。
だからこそ、自己分析は時間がかかり、途中で自己分析自体をやめてしまうことも発生します。
そのために、自己分析にはカウンセラーが必要になっていきます。
人は、自分が気がつきたくないものには、蓋をしてしまいます。
カウンセラーは、その蓋を外す役割ではありません。
本人が自分で蓋を外せるよう、導いてくれる存在です。
人は自分で自分の癖に気がつかないふりをしていても、実はどこかで自分の癖が見えたり、そのヒントに行き着く瞬間があります。
そのことをカウンセラーとの会話のなかで話すと、カウンセラーは相手が自己分析を深められるヒントを、与えます。
カウンセラーは、患者に寄り添いながら、本人が答えを見つける手助けをしてくれるのです。
自己分析の方法について
自己分析は、自分についてあれこれと考える行為ですが、一応手順もあります。
著名な心理学者カレン・ホーナイの『自己分析』では、自己分析の手順が載っていました。参考に書き写しました。
手順1 どんな状況で、自分はつらい気持ち(もしくは頭痛などの症状)が出るのか、思い出してみる。
手順2 その原因を探ってみる。前にもこんなことがあったと思い出したり連想したり、自由に思いをめぐらし表現する。
手順3 2で思い描いたことが、自分にとってどんな意味をもたらすものか、意味を探ってみる。
手順4 3で探った意味が、1で思い出したつらい気持ち、症状にどんな影響を与えているのか、紐づけて考えてみる。
手順5 症状やつらい気持ち、思い描いた連想が、その人の人格のほかの部分にも影響を与えていないか、探ってみる。
以上を繰り返して、自分の人格全体を明らかにしていくのです。
おそらく、読者の方にとっては手順2が難しいと感じるでしょう。
「自由に思い巡らせるってどういうこと?」
私も初めはそう思いました。
この疑問について、ホーナイは次のように語っています。
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「心に浮かんできたものを心に浮かんできた順序で、それが些細なことであるとか、問題から外れているとか話が支離滅裂であるとか、分別がないとか、理屈に合わぬとか間抜けだとか、恥だとか、そういうことを一切問題せずに表現すること」
一切とは、子どもの頃の記憶や、友人との雑談みないな、とりとめのないものも含めるということです。そんな一切の思いを連想していきます。
知的になりすぎず、とにかく思いついたことを書いたり口に出したり表現してみるのです。
慣れないうちは難しいかもしれませんが、慣れていくと自然とできていきます。
人は何も考えてないと思う時でも、何かしら思考したり思い出したり感じたりするものです。
どんなものを思い巡らしているのか、拾い上げ表現するのが、手順2になります。
手順3では、出てきたものについてそれがどんな意味合いをもつのか、イメージしていきます。ここで、自分の感じ方を知っていきます。Aさんにとっては、犬が可愛くても、他の人にとっては「怖い」と感じる場合もあります。
なので、連想したものが自分にとってどんな意味であるかが大事になります。
ここまでいくと、手順4はわりと簡単になります。
人にもよると思いますが、紐づける、整理する、といった作業は、現代人は慣れているのかもしれません。
自分がつらい気持ちになる状況の心理状態を、“心の論理”で理解していくのです。
手順5は、もはや知的作業(4までも十分知的作業ですが)になっていきます。
手順4まで理解したことを、自分の他の部分まであてはめて考えるには、時間がとても必要です。
ここの部分は、特にカウンセラーとの対話が必要となっていくと感じます。しかし個人的には、手順4まででも十分、自分が見えてくるし、立ち直っていけるものと感じています。
「私の体験。自己分析をカウンセリング療法に生かすために」では私の自己分析体験を綴ろうと思います。